18歳上限の撤廃・自立支援−児童福祉法の改正とは

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去る2022年6月。一時保護時に親権者の同意なしに裁判所が必要を判断する司法審査の導入、児童養護施設入所児童の自立支援の年齢制限の撤廃などを盛り込んだ、児童福祉法の改正が成立しました。社会的にも大きな動きとなる本改正は、児童養護施設の現場にも大きな変化をもたらします。今回は、児童福祉法改正の一部と現場の変化についてご紹介します。

児童福祉法の改正とは

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増加の一途となる虐待の相談件数、より浮き彫りとなっている子育て困難世帯の対応という問題に対し、現行の児童福祉法では対応が困難であることに対し、散見する問題を包括的に支援、体制強化を行うことを目的としたのが、児童福祉法の改正です。改正が成立したことでより柔軟な対応ができ、これまで社会問題となっていた事例に対する厳罰化など、様々な変化が社会、児童福祉の現場に訪れます。

改正のポイント

ポイント①:自立支援の年齢制限撤廃

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法改正が決定したのを、私は仕事で移動中の車内のラジオで聴いていました。車内で興奮しながらも、真っ先に浮かんだのがこの年齢制限撤廃で、児童養護施設が大きく変わっていくのを感じました。

現行法では児童養護施設で入所できる原則が18歳未満・最長でも22歳と定められています。18歳になると強制的に親元を離れ社会生活を送ることを意味しており、児童養護施設等の支援から離れたケアリーバーの方々が生活困窮に陥っている現実が問題となっていました。

年齢制限の撤廃により、入所している子どもが自立に向けた準備から社会生活スタートまでを個々の状況に応じて支援できるようになり、児童養護施設で生活する子どもたちにとって大きな光となり、現場職員にとってもこれまで以上の充実したケアを展開できるようになります。

ポイント②:一時保護時の司法審査導入

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本改正において問題を大きく残したのが、一時保護時の司法審査導入です。この法改正により、児童相談所の判断のみで7日間の一時保護が行えるようになります。

改正では、一時保護開始後7日以内に裁判所に保護の請求を行い、裁判所の審査した結果により一時保護状を発行する流れとなります。

この改正における争点は、一時保護に関する不服申し立てが児童相談所のみとなっている点です。

相当件数が見込まれる審査に対し、円滑な施行が求められることから親権者の不服申し立てを明記しなかったことが衆議院厚生労働委員会でも語られています。将来的な課題と認識されていながらも、以前より根深い問題となっている児童相談所と保護者の対立が緩和、解消される仕組みとなることは期待されずにいます。

明確な虐待の事実がある子どもに対し、行政が迅速、確実に安全を確保することに対しては有効な改正でありながらも、運用に向けては丁寧な審査・ルール化が求められています。

現在、児童養護施設は、一時保護を受けている子どもの中でも、より重篤なお子さんを受け入れる状況になっています。保護児童の増加の影響はもちろんであり、今後も増加が見込まれるとなると、児童養護施設の機能強化とキャパシティの拡大、人材の確保など、多様な課題を施設は突きつけられることとなります。

ポイント③:取り消しを受けた保育士の再登録厳格化

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保育所を始めとした施設等で、わいせつ行為等を理由に登録を抹消された保育士の再登録を、現行の2年から最大10年に厳格化されます。

2003年から2020年にかけて登録を抹消された保育士は64名(男性61名・女性3名)おり、再犯率の高い小児わいせつの現状、一定期間が経過すれば再登録が可能である状況に対する保護者の不安が背景にあります。

子どもを取り巻く性暴力に対する対策は保育士だけでなく、教育現場では2021年5月に教員の免許再取得が厳格化されています。今回の法改正で本来子ども達を守るべき福祉、教育現場からの性暴力を根絶する動きがより強固となっていきます。

児童養護施設、一時保護所でもわいせつによる被害が報告され、虐待を受けている子ども達が本来安全であるべき場所で被害を受ける現実があり、人材採用、育成における取り組みに本改正は大きな影響力を持つこととなります。

現場の変化

支援計画の見直し

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私の現場で実際に起きているのが、子ども達の支援計画の見直しです。

年齢制限の撤廃により、現在入所している子ども達の自立を大きく見直されることとなりました。具体的な支援計画はまだ立っていませんがこれまでの「18歳までにここまでを揃える」から「この子が社会に出ていくには何が必要で、それが揃うのはどの時期なのか」ということをより求められるようになりました。

機能向上と生活場所の確保

成人以降も施設で生活するということを想定して空間や人員が構築されている児童養護施設というのは、肌感覚ですが非常に少ないのが現状です。

自立のための訓練スペースの設置、または増設、高齢児童の居室構成と人材確保など、年齢制限撤廃による影響は非常に大きく、22歳以降も生活することが想定される中、後述の専門的なスキルが施設に乏しいのも現実ですので、これらの問題を今から取り組むことが求められます。

人材の確保とスキル向上

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年齢制限の撤廃に伴う入所児童数の増加が見込まれるだけでなく、療育、精神手帳を取得している児童、また境界域の児童のケアは、これまで以上のスキルが必要とされます。それは、重篤化している入所児童の対応に現在でも苦慮している中、さらなる重篤化に対応するのは難しく、現状のままでは施設崩壊すら招きかねないと予測されます。

少子高齢化である現在、人材を確保するのは容易なことではありません。発達、医療、自立支援など、それぞれの分野に特化した人材を募集するのも有効で、新卒採用も、資格取得見込みやこれまで設定していた適性だけでは育成もままならなくなることも予測されるので、人材育成の見直しも必要な施策です。

育成するためには職場環境の改善、施設の多機能化、法人の事業拡大による多様な人員配置など、抜本的な改革が必要となることも考えられます。

法改正に向けて柔軟な対応と準備を

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法改正の施行期日は一部を除き、2024年4月1日となっています。児童養護施設の子ども達の生活は改正に伴い良い方向に変化していくこともありながら、問題を抱えた内容も盛り込まれているため、今後の動向を注視しながら、児童養護施設が柔軟な対応と準備を行っていく必要があります。施設単体だけでなく、児童相談所、行政とも協同した動きが必要となってくるので、足並みを揃えて子ども達の新たな環境を整えていくことが求められます。

子ども達にとって、児童福祉法の改正が良い方向に向かっていけることを期待します。

北村一樹

児童養護施設職員。普段は子ども達の生活をサポートし、休日はライフワークである山に入っています。

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