児童養護施設出身の悩み−葛藤とこれから

児童養護施設出身 悩みと葛藤

児童養護施設の子ども達は、常に自分という存在に悩み、葛藤しています。家族と生活していない自分、それを周りに言えない苦悩、家の事を友人と語れない気まずさ。成長とともに社会が広がっていく子ども達は、どこにいても孤独に苛まれることがあります。今回は、児童養護施設の子ども達の悩みとこれからについてお話します。

児童養護施設の子ども達と社会

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児童養護施設は一般的には広く知られていない児童福祉施設です。昔に比べインターネット環境の普及、SNSの拡散などにより認知は広がっていますが、施設数、地域に児童養護施設があるかどうかといった事から、家族の話題が出せない、アルバイト先で自身の事情について聞かれて苦しくなる、施設出身であることが言えないなど、子ども達は日々の生活で悩みを抱えています。

小中学校、地域の習い事など、長く施設との交流があるところではストレスも少ないですが、高校、大学、就職といった地域社会を飛び出し、施設から離れたところで活動するとなると、施設への理解が薄く認知の差があることから、集団にいても孤独感を感じる子どもがいます。

社会の認知、理解、受容を始め、児童養護施設という存在の発信など、より大きな波となって認知を進めていくことが必要となっています。

子ども達の葛藤と悩み

①:家族や生い立ちの話題

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就職先、進学先で初対面が多い中、会話のきっかけとなるのは出身地や家族のことが多いです。「出身はどちらですか?」「○○なんですね。私の母の実家もそのあたりなんです。」みたいな会話や、家族の写真を見せて「お母さんにそっくりですね」といった話を、児童養護施設の子ども達は苦手としています。

施設では、入所から施設を出るまで、施設を出た後も担当職員が固定であり続けることは難しく、幼少期を知っている職員、学童期を知っている職員といった、時代によって思い出を共有できる職員が異なります。

思い出を一貫して共有することも難しいので、いかに生い立ちを整理し、施設での生活を肯定的に捉えられるかが大切となります。

②:地域の認知

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施設は所在地の自治会、教育機関を始め、警察や近隣の商店街などへ、施設に関する説明、情報共有を行っています。地域へ児童養護施設に対する周知がなされると、子ども達が安心して生活しやすく、過剰な不安や反応が生まれることもなくなります。

一方、児童養護施設が地域にない場合、また高校や大学のように、広いエリアから人が集まる場所となると、施設の状況、子ども達の背景を考慮した柔軟な対応が行いづらく、子ども達の活動がしづらく、孤立する可能性が出てきます。学校入学時、就職などの際には、先方に十分かつ丁寧な説明と関係構築が大事になります。

③:施設と家庭の環境

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全ての子ども、ということではありませんが、家庭とは異なるルール、環境に悩む子ども達もいます。

家に呼んで遊びたいけど施設であることが言えず誘いづらい、門限や生活ルールが在宅時と大きく異なり、窮屈感を感じたりすることもあります。

乳児院からの措置変更や幼少期より施設に入所されている子どもは、施設が家であるという感覚を抱きながら成長することもあり家庭との環境差に悩むことは少ないですが、中高生からの入所や入所理由によって、環境やルールの差異による葛藤が生まれることがあります。

環境やルールは児童養護施設という性質上、完全に家庭と同等というのは難しいですが、入所前の十分な説明や意志の確認、その後の職員とのコミュニケーション、地域連携などで緩和することが重要です。

必要な施策

大人・職員の継続的な関わり

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子ども達が自らを肯定し、一般家庭で生活する子ども達と同じように人生のエピソードを語れるようになるには、思い出を共有できる大人・職員の存在が不可欠です。「幼稚園の頃は運動が好きでよく公園で遊んでたね」「一緒に温泉に旅行に行ったね」など、大人にとっては些細な記憶でも、子どもは鮮明に覚えていて、その当時をしる人にしか語れない内容は沢山あります。

子どもから語るだけでなく、子どもが大きくなり、幼少期の事を語ることも、子ども自身が知らない一面を知ったり、愛されていたのだと実感することにもなります。

また職員が退職しても子どもと関われるよう、施設が退職職員と良好な関係を持ち、子どもが退所しても繋がりアフターケアが行えるようにするといった、施設側の工夫もとても大切です。

イベントの開催・参加

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ネットが普及する前から施設が取り組まれていたこととして大きいのが、イベントの開催です。

バザーを始めとしたイベントを開催することで、施設の周知や地域への還元を行うことができ、児童養護施設に対する理解が深まります。また施設内で文体活動に取り組まれている場合は、自治会の運動会や各種大会に出場したりするのも良いです。

児童養護施設が地域で孤立せず、繋がりを持つことで子ども達の悩みや葛藤への手助けとなり、特に地域で生活する幼少期から小中学生までは特に大切な施策となります。

ホームページの更新

現在は多くの施設でホームページが公開されています。可能な範囲で子ども達の生活を発信し、施設の現状を拡散することで、児童養護施設に対する社会からの理解が深まります。情報が古く更新されていない場合は定期的な更新やホームページをリニューアルしたり、ホームページ以外にもSNSによる情報発信を行うのもおすすめです。

ホームページや非常に多くの方々が閲覧しており、地域、企業、入所している子どもの保護者など、ホームページを更新することで得られる子ども達への恩恵はとても大きいです。

子ども達が前を向いて生活できるように

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児童養護施設で生活する子ども達は、家庭とは違う環境であることで、一般の子ども達にはない特別な孤立、孤独感を感じています。入所時期、家庭環境によって抱く感情は様々ですが、児童養護施設が社会に向けて行う取り組み、現場の努力によって緩和することは可能です。

子ども達が前を向き、自信を持って生活、人生を歩めるようにしていきたいですね。

北村一樹

児童養護施設職員。普段は子ども達の生活をサポートし、休日はライフワークである山に入っています。

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