虐待相談件数過去最多−児童養護施設ができる役割とは

児童養護施設 虐待相談件数

児童養護施設に入所する子ども達の入所理由である虐待。令和2年の虐待件数が20万件を越え、過去最多となりました。これまで社会の児童虐待への意識の高まりを始め様々な背景があり、行政機関、そして子ども達を預かる児童養護施設は、件数増加に伴う子ども達に向き合い続けています。今回は、虐待件数に増加に伴う児童養護施設の役目、これからについてご紹介します。

虐待件数の推移

児童相談所の児童虐待相談対応件数は平成2年時は1,101件でした。そこから年々増加を続け、平成15年では26,569件、平成30年では159,850件でした。平成2年当時と比較すると、想像もできなかった増加です。相談件数の内訳は、最も多いのは心理的虐待が59.2%、次いで身体的虐待、ネグレクト、性的虐待と続きます。

相談経路は警察等からが50.5%、次いで近隣知人、家族親戚、学校となりました。

増加の背景

新型コロナウイルスによる自宅生活

今回の増加の背景で、これまでの増加の要因と異なるものとして、新型コロナウイルスによる巣ごもり生活が影響したと考えられています。夫婦関係の悪化、それに伴う子どもへ矛先が向いてしまうなど、また自粛生活により児童虐待発見が遅れてしまうなど、早期発見やアプローチは虐待防止における必須の動きですが、新型コロナウイルス蔓延によって、こうした初動の遅れにも繋がっており、虐待相談の増加だけでなく、発見の遅れなど影響は大きかったです。

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社会の変化

妊娠先行結婚、貧困率の増加、離婚率の上昇など、児童虐待は社会変化と大きく関わっています。

経済やテクノロジーは発達、発展、生活は豊かになったにも関わらず、家庭の生活は困窮しています。根本的な解決が急がれますが、経済成長に伴って家庭環境も大きく変わり、核家族化、地域での孤立、養育者の養育能力低下など、虐待を発生させる要因が増えたことが虐待相談件数の増加に影響しています。

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虐待への意識の高まり

虐待を発生させる要因が増えてきており、かつこれまで見過ごされてきた虐待が、国民の意識の高まりによって発見されるようになったことで、虐待件数は大きく増加したものと考えられます。

躾と称して子どもに暴力をしてきたことは、これまで文化とされてきました。文化が変わり、それは子どもにとって不利益であり、権利の侵害であり、虐待であると認知されるようになりました。

発見されない虐待要因

身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトといった虐待の内訳がありますが、虐待の実態としてこれまで見過ごされてきた要因も考えられます。

乳幼児揺さぶり症候群や、それに伴う頭部外傷などの増加など、これまで医学的根拠に乏しく反映されてこなかった情報もあり、虐待に関する議論は長きに渡って続けられています。

虐待件数増加による児童養護施設の変化

入所する子どもの変化

私が入職した10年以上前は、経済的な困窮による養育困難で入所する子や、現在と比較すれば一時的に措置されている子もおり、非虐待の割合が多少なり高かったと記憶しています。

現在は虐待件数増加によって、重篤な虐待によるお子さんや、虐待の影響、もしくはそれを発生させる要因である発達に何らかの課題を持ったお子さんが増えています。

問題の複雑化

虐待件数の増加による入所する子どもの変化によって、児童養護施設の子ども、また施設内で起きる問題も複雑化してきています。

これは専門性が上がってきたことで、施設内において見過ごされてきた問題が顕在化したことも理由にありますが、施設内虐待、より大きなトラウマを抱えた子ども同士が生活する環境によって問題発生が起きやすく、新たなトラウマを作り出してしまうなど、問題はより複雑に、かつ大きくなっています。

職員の変化

過去と比べて、児童養護施設に求められる機能、意義はより高度になってきました。虐待件数の増加=大きな社会問題となり、その受入先である児童養護施設ですが、件数の増加に伴う施設入所希望に対応しようにも、施設が既存からいきなり増えることはなく、先述の通り、より重篤なお子さんを受け入れるために、職員の専門性の高さと、これまで以上に知識の広がりを求められるようになりました。

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これからの児童養護施設

小規模化に伴う環境の再構築

現在問題とされている、児童養護施設の小規模化に伴い、大規模な本体施設を持つ児童養護施設は、その活用方法を検討しています。

新たな事業の展開、売却による縮小、事業譲渡など、様々な策が考えられますが、虐待件数増加を元に検討すると、子どもが小規模の環境に移行するステップとして、まずは本体施設で児童養護施設での生活環境に順応し、小規模での地域生活に向かうための準備をするために活用するのも良いです。

また、地域小規模で生活しようにも、職員対応の限界もあり、発達障害や医療的側面、その他の理由により地域での家庭的生活が困難な子どももいます。そうした子どもは本体施設でのケアを行うなどに活用できます。

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職員配置の見直し

より高度で、専門的なケアが求められるようになり、今後もその傾向が高まる児童養護施設。小規模化での人員配置は本体施設運営より手厚いですが、それでも本体施設を備えた柔軟なケアが必要であると考えると、現在の人員配置では対応できない可能性があります。

現場の状況を分析し、職員対応が特に必要な時間帯、求められる技術、知識明らかにした上で、これまでの常勤職員ではなく、非常勤職員の雇用を行うなどの柔軟な対応が求められてくると予測します。いずれにしても、現場と運営のより密接な情報共有、連携が必要になってきます。

虐待要因を分析し、新たなケアに備えよう!

子ども達を取り巻く環境は刻一刻と変化し、虐待相談件数増加に伴い、児童養護施設が求められる機能はかつてより加速度的に高度化、専門化してきています。今の児童養護施設に求められる機能と今後必要になるケア技術を予測するのに、虐待相談件数の要因を分析、把握することは非常に大切です。

福祉だけでなく、教育、社会にも広い目を向け、子ども達をケアする環境を整えていき、これからの環境に向けて準備を進めていけると良いですね。

北村一樹

児童養護施設職員。普段は子ども達の生活をサポートし、休日はライフワークである山に入っています。

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