児童養護施設の勤続年数−背景と働くポイントをご紹介

児童養護施設の職員は、児童福祉の現場を代表する職種のひとつであり、出会った子どもの人生において大きな関わりを持つ大切な役割を担っています。生涯に渡って子どもと繋がる職種ですが、その反面、勤続年数は一般企業と比較して短い状況が続いています。今回はその背景を考察しながら、児童養護施設で働くためのポイントをご紹介します。

児童養護施設 勤続年数

児童養護施設の勤続年数

日本国内における勤続年数は12年ですが、児童養護施設職員の勤続年数は10年以下となっています。数年前になりますが、2016年の調査時点では7.7年でした。現在も大きな変動はないかと思われ、国内平均から下回る勤続年数は、子ども達の居場所としての機能、ケア技術の継承において問題となる数字と考えられます。

児童養護施設という組織の文化、施設職員という特殊な職業であり特有のストレスを持つなど、様々な背景、退職理由、継続理由を紐解き、ケアのクオリティ維持、向上を目指すために、各施設の施策と実行が必要とされています。

児童養護施設職員を続ける理由

ここでは児童養護施設職員を続ける理由について、資料が各サイトで公開されていたりしますが、現場職員を続け、一度退職をした私なりに考察したものをご紹介致します。参考になったら嬉しいです。

続ける理由①:現場職員であることのやりがい

私は約6年間児童養護施設を続け、一度退職をしました。一度目の退職をするまで私を支え続けたのは、初めて担当した子ども達との関わりであり、それが児童養護施設で働くことの大きな理由でした。

出会った頃はまだ幼稚園児であった子が成長していく姿は、これからも見続けたいという気持ちを芽生えさせ、信頼関係が築かれていく実感は、他の仕事では得られないやりがいとなり、職員を全うしようとする大きな原動力となりました。

児童養護施設職員は時に子どもをケアし、その子どもにケアされていくという関係にあり、顔を突き合わせて1日を共に過ごす子ども達からのささやかな気遣いや、時に感謝の手紙をもらったりと、他のものには変えられない報酬であり、おこがましくも、何かあったらこの子を命をかけて守ろうと思えるほどです。

児童養護施設 勤続年数 やりがい

続ける理由②:仲間

幸いにも、私はチームを組んでいる仲間に恵まれました。面倒見の良い先輩の方々、私が仕事で失敗するとしっかりイジってくれた同僚、宿直の時はくだらない世間話に付き合ってくれる後輩がおり、この環境がなければ3日で辞めたことは間違いありませんでした。

児童養護施設の現場は、生活ユニットが小規模になればなるほど、職員は新卒、ベテラン問わず1名で業務に入ることがあります。その重圧は大きく、上手く子ども達と関われる日だけでないので、緊張感と孤独は時に職員を追い詰めます。

自分の失敗を叱咤しながらも時に共感し、笑い飛ばしてくれる仲間の存在は、孤独を解消し、この人達のために頑張ろうと思える、子ども達の存在と同じく仕事を続ける大事な要素となっています。

一般企業でも同僚の存在というのは大きいものですが、児童養護施設職員にとって、仲間は仕事をする上で特に大事な要素です。

児童養護施設 勤続年数 仲間

続ける理由③:キャリアビジョン

6年間の仕事を終えた後、ベンチャー企業や個人事業の手伝いを経験し、縁あって同じ施設に戻りました。その時、専門学校を卒業してすぐに今の施設と福祉の業界に飛び込んだ当時より、明確に私のキャリアビジョンが描かれていました。人生を豊かに、満足に終えるための重要な要素である仕事のキャリアビジョンを描くことは欠かせません。施設の理念や私に対する評価、期待される職場からのキャリアが合致すれば、パフォーマンスは向上し、エンゲージメントも高まります。

児童養護施設職員を辞める理由

辞める理由①:過酷な勤務状況

児童養護施設の現場は精神的な過酷な現場です。夜が明ける前に出勤し、日付が変わった頃に勤務を終えることも珍しくなく、翌日も再び夜明け前に出勤します。休日は泥のように倒れ込んで眠り、1日を終えていたというのも、児童養護施設あるあるです。

過酷な勤務と孤独の中、精神をすり減らし、それでも子ども達と相対する事に疲れ、気がつけば心身が崩れ、気がつけば病院通いとなり、ボロボロになって退職することになります。

そうして辞めていく仲間を見るのが、私が現場職員を続けている中で辛い瞬間の一つです。

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辞める理由②:評価とキャリア

かつては長く働き続ける事が良いとされ、勤続年数と経験・実力が比例する業界であったため、年功制というシステムが定着していました。

現在はインターネットが普及し、SNSなどでも最新情報が即座に入手できる様になりました。続けているだけでは評価とはならず、以前よりも多様な仕事を選べるようになったことで、児童養護施設で働き続けることの意義が見出だせなくなりました。

大規模な施設においても児童養護施設は現場職員は役職や役割は少なく、また中には報酬その他に影響する評価、人事を行わない施設もあります。得られる技術も専門的でありながら、一般的には狭い業界内のものであるため、早期に見切りをつけ、新たなキャリアを希望する若手職員がいることも頷け、勤続年数が上がらない大きな理由と考えられます。

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辞める理由③:環境の変化

結婚・出産・引っ越しなどの環境変化に児童養護施設職員は対応が難しい職種といえます。

拘束時間が長く突発的な業務が入る傾向がある現場職員は、職場から近くに居住し、シフトの融通が利く職員が好まれます。入職当初はどんな状況でも勤務できたけど、結婚してパートナーの理解が必要になり、出産後に子育てをしながら勤務できるシフトが組めなかったりと、フレキシブルにできないことは勤務継続が困難となる要因となります。

最近は新型コロナウイルスによりテレワークが普及や生活の見直しが行われていますが、現場業務であるため住みたい土地から通えないことも、今後退職理由の中に入ってくることも予測されます。

私が退職したのは結婚して2年以内で、色々と理由はありましたが、退職理由の一つに、結婚してからの環境変化もひとつの理由でした。

児童養護施設職員を続け、円満に退職するには

ここでは、職員個人ではなく事業者側の視点というのが大半となりますが、仕事を不満なく続け、また円満に退職するための方法をご紹介します。

適正な評価と人事

職員の実績と努力に対し明確な評価を記録に残し、対話によって職員が目指すキャリアと一致させていくことが、施設側に求められています。

児童養護施設で働くことは自分の人生にとって有益なのか、子どもと向き合い続けることで自分は成長していけるのか、働き続けることで自分のキャリアはどうなっていくのか、努力や実績を組織は評価してくれているのか。職員を孤独にさせないためにも、評価と人事は職員が仕事を続け、また円満に退職するための大切な要素です。

また採用・育成・異動・退職という一連のシステムを組むことで、より施設と職員が円満な環境を作ることが可能になります。

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事業の成長と共に役職の広がりを

児童養護施設の小規模化の推進によって、本体施設を持つ児童養護施設は、今後の運営とその判断に迫られています。いずれにしろ現状維持は想定しづらく、新しい事業を展開するか、土地の売却による縮小などを検討することになりますが、事業を成長させ新規展開させていくことで、これまでプライベートの環境変化によって退職せざるをえなかった職員に、ライフスタイルに合わせた役職を提案することができます。

頑張りすぎない

私が出会う児童養護施設の職員さんは、身を切り売りするように仕事に集中する方が多く、現在は以前より減っている印象を受けますが、それでも一生懸命過ぎるくらい仕事をしています。

毎日全力で働かず、少し気を抜いて仕事をするくらいが丁度良いです。

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効果的な技術の継承とアフターケアを

勤続年数が長ければ優良な施設、というのはもう過去の話となっています。ライフスタイルは時代と共に変化し、情報技術の発達と共に、黙って背中を見せて育てるだけでなく、人材マネジメントスキルも身につけ、より専門的な視点で人材を育てる事が必要となりました。

ベテラン職員の技術を後輩に現場で教えこんでいくだけでなく、組織内で研修を開いたりSNSを活用して新鮮な情報を流すなど、技術の継承をこれまでとは違う形で行うことで、経験年数の低下にも対応できるようになります。もちろん、経験に勝るものはない領域もあることを理解しながら。

また、ベテラン職員が退職をしても施設と繋がり、アフターケアに関われる環境を作ることも大切です。子どもにとって幼少期を知る職員が不在となり、思い出を語れないことは大きな損失です。ベテラン職員が退職することで影響を受けることが予測されるのがアフターケア。円満に退職し、繋がれるためにも人材マネジメントに力を入れることは必須です。

子どものために、施設と職員が友好な関係を築こう!

児童養護施設職員は、子どもの人生に密接に関わる大事な職業です。時代が変化し続けていく中で、勤続年数の評価も変わっていくことが予想されます。年数に囚われず職員が幸福に働き続け、また円満に退職することが、子ども達のケア向上に繋がります。

施設と職員が手を取り合い、互いに利益となる職場環境を築いていけることを願っています。

児童養護施設 勤続年数

北村一樹

児童養護施設職員。普段は子ども達の生活をサポートし、休日はライフワークである山に入っています。

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