児童養護施設職員のスキル-求められるスキルと今後

児童養護施設 スキル

児童養護施設の職員は、オープンではない業界、普段は生活を共にしている印象から、どんなスキルが求められるか分かりづらい印象があります。私自身、学生の方や志す方に「職員になるために(資格取得の他)何をしたら良いですか」と聞かれることがよくあります。今回は、児童養護施設職員に求められるスキルについてご紹介します。

広い知識を持つ児童養護施設職員

児童養護施設には生まれも育ちも異なる子ども達が生活しています。そのため、一人ひとりの子どもに合わせたケアを行っています。それぞれに必要な知識、技術を要求されるため、必然的に身につける能力は広く、奥が深くなっていきます。では、どんな知識、技術が求められるのでしょうか。

求められるスキル①:生活力

児童養護施設 スキル 生活力

炊事・洗濯・掃除・家電の取り扱いの他、行政手続きから通院など、日々の生活を送る上で一見して「当たり前」と見えることが、意図的にできることが必要です。これが意外と難しく、職員であっても意外と知らなかったことが多く、また奥が深いと常々感じます。

子ども達は虐待という環境下、劣悪な衛生状況で生活していた背景があり、清潔な環境を保つこと、出てくる食事が温かい、風邪を引いたら病院に行くという、何気なく行ってきた事を経験できずにいます。

私も親になって改めて実感しますが「子どもが好きな味付け」「いつもと雰囲気が違うから検温」「散らかった玩具をあえて一緒に片付ける」など、子どもの頃に無意識に経験していたことが、実は意図的で、想いのあることであったと振り返っています。

日々の生活に目を向け「何故」という視点を常に持ち続けたり、深めていく事で生活力を高めていくことは、児童養護施設職員として欠かせないスキルです。

求められるスキル②:発達障害

児童養護施設 スキル 発達障害

子ども達はそれぞれ魅力に溢れた個性を持っています。しかし個性とはまた異なる、子ども達が社会と関わる上でとなっている特徴を持っている場合があり、時に障害と呼ばれます。発達障害の知識を持つことは児童養護施設職員として必須です。

場違いな発言が多い、集団行動に参加できず離席してしまう、初めて見る文章が上手く読めないなど、一見して「困ったなぁ」と思う行動は、子ども自身も悩み、苦しんでいることが多いです。成長と共に消失するのか、生涯抱えていくのかなどを評価する際、発達障害の知識はとても役に立ちます。

問題を解決するために医療に繋げるのか、学校で個別的なアプローチをしていくのかなどを判断し、関係各所と相談、連携を取る際にも、専門家ほどではありませんが、基本的な知識を持っておけば、連携も取りやすくなります。

また日々の子どもとの関わりにおいても「困ったなぁ」が徐々に「いい加減にして」と怒りに変わることもありません。入職前でも学ぶ領域ではありますが、入職後も常に最新の情報を入手する必要があります。

必要なスキル③:医療

児童養護施設 スキル 医療

幼い心に大きなトラウマを抱えている子ども達。また持病を持つ子どももおり、小児科を始め、精神科など子どもの症状に応じた医療機関と繋がることがあります。入所した時は何も症状や問題が見られなかったが、環境を変えて過去のトラウマが浮き彫りになったり、症状が成長とともに表出していくので、突発的、かつ専門的な対応を求められることがあります。

最近では新型コロナウイルスが話題ですが、日々の感染予防から隔離時の対応など、知識があればこそ突発的な対応でも柔軟に対応できるというのは、記憶に新しいですね。

発達障害同様、専門家と同等の技術が必要ということではなく、子どもを冷静な目で見つめ、落ち着いて対応するために備えておきたい領域です。

必要なスキル④:コミュニケーション

一般企業でも同様ですが、対人援助職である児童養護施設職員は特に求められるスキルです。

子どもとの関わりでは、ちょっとした気遣いや言葉かけなど、子ども達は大人の一挙手一投足を見逃すことはないので、コミュニケーション力が高い人は、無論信頼や関係構築が早く、ケアにも生きてきます。「このアニメ好きなんだ」という子がいれば、しれっとコラボのお菓子を買っておいたりすると「分かってんじゃん」と喜んでもらえたり、職員のコミュニケーション力が高ければ、子どもからの心遣いにもいち早く気付き、単純に嬉しいだけでなく、子どもの姿を的確に捉えることもできます。

また、チームを組む職員同士でも、生活支援という特殊な環境ということもあり、まるで家族のように時間を共にすることもあるので「言い合える仲」でいられることはとても大切です。職員同士の関係は子どももしっかり見ており、大人同士の仲の良いと、子ども達の雰囲気も自然と柔らかくなっていきます。

その他のスキル

児童養護施設 スキル オフィスワーク

一般的なオフィスワークに必要なスキルを備えておくと良いです。PC操作、会議の司会進行、業務効率化など、児童養護施設職員としては見落とされがちなスキルではありますが、キャリアアップしていくと自然と生活支援以外にも行う業務が増えてくるので、日々の業務から意識したり、時には外部の講習に参加するのもおすすめです。

自己分析力

児童養護施設 スキル 自己分析力

これは私が現場を経験して感じてきたことですが「自分がどんな人間か」というのを深く理解し確立している職員は、子どもからの信頼も厚く、健康に仕事ができると感じています。

子ども達は日々成長し、昨日と同じであることはありません。とても嬉しいことではありますが、成長に対応するには、迎え入れる職員はその成長に24時間備えることが必要であり、健康であることも大切です。自分が今疲れているのか、コンディションを把握するにも自己分析力は必須です。

また、深い傷を負っている子ども達は、時にケアされていく過程で思いもよらない言葉をかけてくることがあります。時に挫けそうになるほど痛烈な言葉は、自分でも知らなかった弱い部分が露わになり、職員も傷を負います。そんな時、自分の半生を振り返り整理している方は、この傷からの立ち直りも早いです。

これから求められてくるスキル

現在、自立支援の年齢制限撤廃の動きや、施設退所後の支援である「アフターケア」に注目が強く集まっています。18歳という壁を越え、人生を支えていくためのノウハウや技術が、児童養護施設職員、ならびに施設自体に求められてきます。

この他、里親さんとの連携など、子ども達を広く深く理解し、数多くの関係機関と関わる児童養護施設職員は、時代の変化に常にアンテナを立て、柔軟な対応が必要となります。

必要なスキル獲得と新しい情報の収集を!

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児童養護施設で働く職員は非常に幅広い技術と知識を持ち、子ども達に合わせたケアを行っているプロフェッショナルの集団です。積み重ねたものだけでなく、時代の変化に合わせ新しい情報、技術を仕入れ、即座に子ども達のケアに反映させる柔軟性も求められる大変な仕事ではありますが、得られるものも大きい職業でもあります。少しでも、児童養護施設職員のことを知ってもらえたら嬉しいです。

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北村一樹

児童養護施設職員。普段は子ども達の生活をサポートし、休日はライフワークである山に入っています。

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