自立支援の年齢制限撤廃-変わる児童養護施設の支援とは

児童養護施設 年齢制限撤廃 自立

児童養護施設の入所する子ども達が抱えている問題が「18歳の壁」です。18歳の年度を越えると施設を出なくてはならないこの原則は、長く子ども達にとって、また支援者である職員にとって悩ましい問題でした。今回は、今話題となっている、自立支援の年齢源撤廃について考えていきたいと思います。

児童養護施設に入所できる期間とは

児童養護施設は、法律上の児童と定めた18歳までの子ども達が入所しています。18歳を越えても施設に在籍する場合には、特例として行政が認める「措置延長」が必要になります。

そうはいっても期間限定ということもあり、精神的、社会的にも自立が難しい子ども達にとって、この18歳で自立をするというのは、大きな負担となっています。

現在は行政も18歳以降も措置を延長する意向を示しており「アフターケア」の充実が業界内では広く認知されるようになってきました。

年齢制限による負担

進学の困難

高校を卒業して進学する場合、一般的には保護者の援助や奨学金制度等を利用して生活、学費の工面をすることになりますが、児童養護施設を出る子ども達は、これを自分で賄わなければなりません。

学費を工面しながらサポートも薄いまま生活をする。学費の工面も含めて一ヶ月に十数万円を要する生活を想像すると、社会人1年目でも難しい収入を学生となる18歳から稼がなくてはなりません。生活が保てず退学をする子ども達も決して珍しくないのです。

児童養護施設出身者の進学率も低く、これは助成金を受けたとしてもその後の生活維持の困難さが大きいことを物語っているといえます。

精神的自立の困難

就職先でも高校生気分ではいられず、甘えることも難しい。気がつくと仕事を辞め、住居を失う子もいます。

これまで大家族のような雰囲気で暮らし、帰るとヤンチャなちびっ子がいて「おかえり」と迎える職員がいる。鬱陶しいながらも温かい雰囲気がある場所から、突然生活音が何もない一人暮らしが始まります。私が担当した子ども達の殆どが「寂しい」と退所後に漏らすほど、18歳で社会に出ていくことは辛いタイミングです。

年齢制限撤廃で何が変わる?

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個々の必要に応じた支援ができる

18歳で自立するということは、子ども自身にとって大きな負担となります。

年齢制限が撤廃されるということは、これまでの18歳の退所に向けたケアから、その子の状況にあわせたケアが可能になります。4大に進学する子もいれば短大、専門学校に行く子もいて、高校を卒業して働く子もいる。就職する子でも職場に慣れるまでは施設に在籍することもできます。

高校の卒業というのはとても晴れやかな瞬間であるのに、児童養護施設の子ども達にとっては、未だ見ぬ社会に飛び出す不安の幕開けでもあったわけですが、これが無くなり、個別のケアに注力できるというのは、児童養護施設に携わるものとして非常に嬉しいニュースです。

施設のケアが変わる

年齢の壁が取り払われるということは、入所中のケアが大きく変わります。

これまで構成していた各居室の児童構成を見直したり、20歳以上の自立に向けた子への環境提供も必須になります。本体施設と地域小規模の2形態を運営する施設であれば、本体施設をいかに利用するかも検討が必要になります。

施設のケアにおいても、年齢制限が撤廃となった場合、児童養護施設のみならず、児童相談所との入退所の調整、大学や専門学校といった新たな教育機関との連携、18歳以上の子どものケアという新たな領域のスキルが必要になるなど、現場職員もこの改正に向けて準備をしなければなりません。

ずっと居て良いのか?

年齢制限が撤廃されたとして、入所期限が永遠になるかといえばそうではありません。来るときには施設を出て自立するという事は変わりません。懸念されることとして、まだ居て良い=胡座をかくような事態となると、今回の法改正の目的からは逸れる事になります。18歳になるべく退所するよう急かすというのは本末転倒ですが、時期をしっかり見極め、そこに向けてケアをするという点で、現場職員の腕が問われることになります。

自立支援の年齢制限撤廃で負担のない自立を!

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自立支援の年齢制限撤廃は、これまで施設を巣立っていった子ども達が抱える不安を払拭する大きな働きになります。施設にいる子ども達の可能性を広げ、進学、就職等、子ども達が望む子ども達らしい未来を得ることは、児童養護施設として実現させたい取り組みであり、法改正には大きな期待を持っています。期待だけではなく実現した際には課題もありますが、これを乗り越え、子ども達に安心できる未来を提供していきたいですね。

北村一樹

児童養護施設職員。普段は子ども達の生活をサポートし、休日はライフワークである山に入っています。

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