
児童養護施設の現場職員は、子どもと過ごす時間だけではなく、支援方針を決めるミーティングや、各関係機関との打ち合わせなど、現場以外でも仕事をしています。その中の一つであるカンファレンスは、施設職員の基本の業務でありながら、学ぶ機会の少ないジャンルであると思います。今回は、そんな会議に必要なスキルについてご紹介します。
目次
児童養護施設における会議とは

児童養護施設における会議の対象は、主に職場内におけるもの、関係機関とのものに分けられます。関係機関とは主に、児童相談所、医療機関、乳児院などの児童福祉施設、保護者、教育機関、児童関係の一般企業が上げられます。
内容はもちろん子どもの事ですが、取り扱われる内容は様々で、目の前で起きている子どもに関する問題の解決、長期的に家庭と子どもがどう関わっていくか、子どもに合わせた学習の提供についてなど、最も子どもと接する立場として、広範囲の情報を把握していることが求められます。
現場で子どもと接する力は非常に高い現場職員ですが、一方でビジネススキルでは一歩劣る傾向にあり、私も若手の頃、百戦錬磨の大人な方々にハートの形が変わるのではないかというくらいボコボコに言われ、言いたいことなどまともに言えず議論にすらならないという、ヘドロを舐めるような悔しさを味わったことがあります。
会議の種類
会議には大きく分けて2種類あります。
ミーティング
いわゆる一般的な会議のことです。関係者が集まり少人数単位から行われます。福祉の会議ではあまり聞き慣れない言葉だと思いますが、一般企業では主に会議といえばこちらを指します。
カンファレンス
医療・福祉における場合の会議として用いられるのがカンファレンスです。他の業界でも一般の会議とは棲み分けをしてカンファレンスを用いられますが、専門家が集まっての特殊な会議を行う際に用いられるのが、このカンファレンスです。例えばビジネスにおいては大規模な会議を行う際にカンファレンスという言葉を使います。
児童養護施設では、同じ福祉関係者との会議においてはカンファレンスを用い、一般企業や保護者等との場を持つ時は使わず、ミーティングや打ち合わせなど、内容や参加者に応じて変えている傾向にあります。
私の周りでもよく「カンファ行ってきます」と、慣れ親しんでいるのはカンファレンスです。
どう使い分ける?
明確な取り決めはありませんが、子どもの事を取り扱い、かつ専門機関のみでの会議はカンファレンスと呼び、一般企業や専門外の取引先など、かつ子どものことではない事案を取り扱う際には、ミーティングと呼ぶのが良いです。
児童養護施設における会議の重要性
児童養護施設職員がおける会議は、子どもの人生が変わるほど重要と言っても過言ではありません。「療育手帳を取得するか否か」「家に戻るか自立か」時にその子の人生を左右する決断をすることもある児童養護施設職員は、その子にとって最善の選択ができるよう、全力で会議に臨みます。
関係者の見解が一致するような手堅い会議だけではありません。長く時間を共にしていたからこそ解る子どもの気持ちを受け止め、いかにそれを代弁し、必要な情報を提供し会議を組み立てていくことで、良い結果を導き出せるよう努力していきます。
会議に必要なスキル
スキル①:会議目標を明確にする
会議で関係機関、必要なスタッフを招集する際、必ず伝えるべきことは「なぜこの会議が行われるのか」「会議を終えた時、何が決まっているのか」など、目標を明確に提示することです。
主催であるご自身がこの目標を整理していくことで「今何が問題なのか」「何が足りないのか」「解決すると何が見えるのか」などが見えてきて、恐らく問題の大半は整理されていくことと思います。ここを怠ると、まず会議の整理に時間を割くことになってしまい、関係各所から愛のあるお叱りが無数に飛んできます。
スキル②:必要な資料を準備する

事前に提出する資料は非常に重要です。児童養護施設職員が苦手としている領域のひとつであると思いますが、自分の考えを文書化し、それを的確に伝え、共有する能力が求められます。
問題解決に対して必要な情報を抽出し、時にはデータ化することもありますが「このデータを見ると何が分かるのか」「読めば皆が同じ理解が出来る内容」であることなど、資料作りは非常に大切です。ここで共有ができないと、議論は平行線となるか会議が瓦解し、非常に後味の悪いことにもなりかねません。
ここでしっかり資料ができ、事前に提出することができれば、先の会議目標と合わせて、主催者側の意図は概ね伝えることができるはずです。
スキル③:予測する
予測できないことを予測しようとしてもそれは不可能ですが「誰がどんな発言をするか」「どこを指摘されるか」など、参加者の構成や会議時間、それこそ会議場所なども考慮して予測することで、事前に必要な情報を持ち合わせていくこともできます。
また職場内で上司や別の役職の者が同行する際は「ここの情報が欲しい時は振るから」「こういう結果に持っていきたいと思ってる」など、事前に根回しや意識共有をしておけば、身内同士で不意を突くようなやり取りをしないで済みます。
スキル④:的確な進行
会議を目標に向かって進めていく進行力が主催者側には必要です。「議論がズレていないか」「一度休憩を入れたほうが良いか」など、全体の状況を把握しながら会議を走りながら組み立てていきます。良くも悪くも、会議の雰囲気を決めていくのは司会進行の腕で決まります。会議開始前に「今日は何時までを目標に」や、会議目標を共有するなど、全員がリーダーシップを発揮し、一丸となって会議を進めていくマインドセットを行うことも、司会進行の仕事と言えます。
会議開始前のちょっとした雑談も重要です。会議参加者それぞれの状況を見ることができるからです。顔見知りの相手であれば、前回話したときのことを思い出して振ってみると思わず笑顔になったり、初対面の時は王道のネタを持っておけば、どんな人かを窺い知ることができます。
スキル⑤:参加者が満足できる結果を導き出す

会議を進め意識がまとまりかけたところで、それぞれの意見を共有し、まとめの作業に入ります。「こういうことで宜しいでしょうか。」と一言入れるだけで、全員の同意を取る時間を得ることができます。ここで異論や確認がある場合は、それぞれ意見を出してもらい、微調整を行います。
全員の同意を取ることで一定の達成感は生まれますが、この会議をやって良かったと実感を得ることは、継続的な議題を持つ会議であれば、次回までの期間と当日のモチベーションに繋がります。その結果に持っていくには、会議中の進行にかかっているので、気を抜かず最後までやり切る心を持って会議に臨みます。
スキル⑥:次の会議を決める
議論が解決せず継続する必要があったり、定期的な開催が望まれる場合は、次回の日時や場所の事務的な共有の他、次回会議の目標、会議に必要な資料なども共有しておきます。後日の調整となると、会議を終えた直後ほど意識が統一されていないこともあったり、日程調整が難航することがあります。
また会議の議事録はその場でデータで共有するか、ホワイトボードなどに記載したものであれば、そちらを撮ってもらって共有しても良いです。
子どもの個人情報の漏洩には十分に注意して取り扱います。
会議力を磨いて満足度の高い会議を!

児童養護施設で行う会議は、子どもの人生を考え決定していく重要なものです。会議力を磨いていくことは、子どもの最善の利益をもたらすことに繋がり、また職員の技術力向上、セカンドキャリア構築という、人材開発という点でも非常に有効です。会議自体に生産性は有りませんが、をより良いものにしていければ、時間を無駄にすることなく、良い結果を短時間に生み出すこともでき、その後の業務の効率は上がっていきます。
会議力を磨いて、子ども達のより良いケアに役立ててくださいね。
コメント