児童養護施設の多様性−LGBTや一人ひとりを大切にする対応とは

児童養護施設には様々な環境で育ってきた子ども達が暮らしています。養育者の元で人格が育まれ、家庭の中で営まれ培われる文化は、その子だけが持つ自分らしさが確立されていきます。同じ環境下で皆で生活する児童養護施設は、社会のテーマであるLGBTを始めとした多様性に向き合う時に来ています。今回は、児童養護施設に求められる多様性と対応についてご紹介します。

社会の多様性とは?

多様性(ダイバーシティ)は、性別、国籍、年齢といったことに囚われず、互いの価値観を受け入れ、尊重していけることをいいます。その人が持つ個性、強みを最大限に活かしていけることが期待され、SDGs(持続可能な開発目標)を進めていく上でも、この多様性は非常に大きなテーマとなっています。

近年では男女の労働格差の改善、性的マイノリティであるLGBTへの理解など、児童養護施設を取り巻く身近な社会でも感じられるようになりました。

児童養護施設の変化と課題

社会の変化に合わせて姿を変えてきた児童養護施設。従来よりも柔軟な変化と対応が多様性には求められており、特に大多数の子ども達を少人数の職員で支援する大舎制では、この問題に対応するために山積の課題に直面しています。小舎制も例外ではなく、これまでの児童養護施設から大きく変わっていく時期に来ています。

変わる子ども達の生活

学校では男女で「○○くん」「○○さん」と呼ばれることはなくなり、なりたい職業に「YouTuber」と答えるなど、個が尊重され、自分らしさを表現できるクリエイティブな仕事が子ども達に認識されるなど、十数年前に比べて子ども達の生活は確実に変わってきています。
自分の性的指向が周りと違うかもしれないという気づきも、以前は感情を隠して周りに合わせる子が(きっと)いたと思いますが、今は社会の変化や理解者が増えることで、少しずつですが相談できる子どもが増えてきたように思います。
私が職員となった10年以上前に比べて、子ども達が見つめる外の世界はより彩りが豊かになり、自分の何色なのかと疑問を持つ子どもも多く見られるようになりました。

児童養護施設の課題

課題①:職員の受容

真っ先に課題となるのは、児童養護施設で働く職員です。子どもだけでなく、職員にも育ちや故郷の文化などがあり、生きてきた時代があります。その垣根を払い、子ども達を受容していくということは、マニュアル通りにやれば良いわけではないケアワーカーならではの苦悩があります。
これまでは明確なルールや共有される価値観が存在し、そこに合わせれば良く間違いもありませんでした。現在は、子ども一人ひとりの考えに耳を傾け、受容していく関わりが多くなっていますが、それは時に、自分の価値観の否定ともなる可能性があり、職員自身の育ちや考えを乗り越えていく必要があることは、時に辛い壁となります。

多様性に対応できる環境を作ることは、職員の育成が不可欠です。

課題②:環境設定

私が働く施設には、子どもの生活スペースにトイレが2つあり「男女」でトイレが分けられています。生物学的な男女で分けたものですが、違和感やストレスを感じる子がいるかもしれません。その子の指向に合わせて使うトイレを選んだりする事が必要です。
部屋の雰囲気、食器、ランドセルの色、着る服など、これまで何気なく過ぎていたことを一度振り返る必要があります。

課題③:家族の理解

児童養護施設で生活している子ども達は、家庭引取の時、また家庭に戻らず自立し大人になる時など、必ず家族と向き合う時が訪れます。その際、状況によっては両親に子どもの考えを告知する事もあり、繊細な対応が求められます。

私は現在4歳の娘がおり、ある程度我が子の価値観には広い心を持っていると思っていますが、それでも自分が想像を超える考えや、なんだかんだで期待してしまう「将来の我が子の姿」を想像すると、それから大きく反する事がやってくると、さすがにショックを受けてしまうかもしれません。

性的指向、子どもが描くライフワークは、社会の持つ広い価値観と多様性によって、丁寧な説明や職員自身の知識や整理が必要です。そして前述のように、子どもの意思と家族の意思を尊重し、互いが理解し合える働きかけも欠かせません。

多様性に対応するには

職員間で価値観を共有し合える時間を

日々の子どもの行動、発言の背景を決めつけず、担当者間や組織内で共有し合うことがとても大切です。子どもが恋愛ドラマを観ていて「こういうのどう思う?」と聞かれた「○○さんに○○って言われたんだけど」など、子どもが発信する疑問や感情を共有し応えていくことで、子どもが持つ多様性を損なうことなく対応できます。

自分の考えを整理しておく

質問に対し、定型文を返しても、子どもが腹落ちすることはなく、また職員との信頼関係も構築されていきません。自分自身の考えをまとめ、意思をしっかり伝えることが大切です。

「私は本当にこれで良いのかな・・」と迷う時、真っ直ぐに伝える職員の気持ちは、時に子どもの背中を押し、「私はこれで良いんだ」という自信に繋がります。反面、不用意に伝えてしまうリスクもあることを意識しておきます。

児童養護施設の多様的なケアに備えよう!

児童養護施設は時代に合わせて柔軟に変化し、子ども達を支援してきました。現代はこれまで以上に変化の波は早く、対応できる力が求められます。社会の多様性は相手を受け入れるだけでなく、職員が自分をより理解し深め、自分も相手も認めていく力が必要です。その先に、LGBTを始め、社会の多様的な在り方に対応し、子ども達が子ども達らしく、健やかに成長できる環境を築くことが出来ます。焦らずじっくり、長期的な環境整備に備えると良いです。

北村一樹

児童養護施設職員。普段は子ども達の生活をサポートし、休日はライフワークである山に入っています。

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